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科学技術之雑談帖(その24)―富士山測候所の現在

嘗て富士山頂には、気象観測用のレーダーが設置されていました。現在の様な気象衛星のない時代、台風の進路予想等に与って力があったのでは、よく知られている処か、と思います。時代の流れでその役割を終えたのが2004年の事だそうですが、その後も地道な観測施設として使われている様で。

<引用開始>

日本一高い研究室「富士山測候所」に大気化学者ら結集 貸与10年、通年観測でも成果あり

気象庁の富士山測候所として使われた施設を借り上げて、有志の研究者が大気などの観測を開始して10年。一時は存続が危ぶまれたが、集う研究者は当初と比べ倍増し、無人の通年観測も一部で始まるなど活気にあふれている。

富士山測候所は1932年に山頂にできた施設が始まり。死者・行方不明者が5千人を超えた伊勢湾台風をきっかけに64年、気象レーダーが設置され国民を守る要塞となったが、気象衛星の登場で2004年、有人の観測は幕を閉じた。測候所の主務はレーダーと気温、湿度、気圧などの物理的な観測だったが、1990年代からは気象研究所の研究者らが大気の成分や漂う微粒子、降水などの分析を行ってきた。こうした化学的な観測は試料を実際に採取する必要があり、衛星では代替できない。

気象研の主任研究官だった土器屋(どきや)由紀子さん(78)らが学術的な重要性を訴えた結果、2007年から民間非営利団体NPO)の「富士山測候所を活用する会」を受け皿に施設が夏季だけ貸与され、研究を継続できることになった。

◆理想の観測タワー

高度千メートルから十数キロは自由対流圏と呼ばれ、大気の質量の約70%を占める。局地的な影響を受けにくく、地球全体を把握する上で重要だが、航空機で観測すると費用がかかってしまう。地上での観測拠点は、アジアではネパール・クーンブ渓谷(標高5079メートル)や中国・ワリガン山(同3810メートル)に整備されているが、富士山(同3776メートル)はとがった単独峰のため大気の流れに影響を与えにくく、地形が理想に近い。

中腹での観測も合わせると、高さによってデータがどう変わるかも分析できる。富士山は、いわば日本一高い観測タワーだ。東日本大震災福島第1原子力発電所事故では、山頂と中腹で放射線を観測することで、飛来した放射性物質の高度が明らかになった。

中国経済を反映か

地球温暖化の最も基礎的な化学データは大気中の二酸化炭素濃度だ。国立環境研究所は無人の期間も観測できるように大量のバッテリーを山頂に運び、09年夏から通年で観測を始めた。米ハワイ島にあるマウナロア観測所(同3397メートル)のデータと比べると、二酸化炭素濃度は、夏は大陸の植物による吸収で低く、冬は車の排ガスなど産業活動の影響で高いことが分かった。大陸の大気が偏西風で運ばれるためだ。

環境研の野村渉平特別研究員は「約8年の観測でトレンドも見えてきた。中国経済の動向や、問題となっているインドネシアの焼き畑の状況も分かってくるはずだ」と指摘する。有害物質の水銀についても産業技術総合研究所が乾電池程度の電力で動く検出器を開発し、昨夏から通年観測の試みが始まった。

水銀は石炭の燃焼や、南米など途上国での金採掘で大気中に放出される。産総研の兼保直樹グループ長は「日本は水銀の研究で指導的な役割を期待されている」と話す。ほかにも首都大学東京などが二酸化硫黄の観測を検討している。

◆目標は常駐観測

山頂での観測は昨夏、大気化学の研究者ら延べ456人が参加。10年前の倍以上に増えたが台所事情は苦しい。年間予算は約4千万円で、電源や施設補修の費用はNPOが負担しなければならない。08年には雪による電柱の倒壊で500万円の臨時出費を強いられた。年間を通じて山頂に常駐できないのは、冬季の要員交代が命懸けになってしまうためだ。台風を監視する重要任務を担った時代はやむをえなかったが、研究のために犠牲者は出せない。

NPO理事を務める土器屋さんは、プロの登山家に依頼しての常駐観測を目指しているが、現状では資金がおぼつかない。「まずは財政基盤を強化して電源や施設を整備し、多くの研究者を集めて成果を出したい」と話している。

<引用終了>

出典Web:http://www.sankei.com/premium/news/170319/prm1703190020-n1.html

こうした観測の継続には、国の予算を投じても良いのでは、と個人的には思うのですが、そうでもないのでしょうか。尤もこうしたすぐ目に見える成果が出るわけではない自然観測、という事には予算が付きにくいもかも知れませんね。