たのしい社員旅行

社員旅行というやつに行ってきた。昭和フレグランスの漂う素敵なイベント。個人的には堪らなく好きなのだが、多くの人々(特に若い人々)にとっては苦痛だったりする。女性のなんとか、とか、なんとかハラとか、場の倫理やらというのが抜き差しならない、伝統的な階級制度において、そうはいっても、若輩ものは苦渋を嘗めることが多い。ひと昔(といっても具体的にどのくらい前なのかわからない、少なくともバブル前であろう)なら、その屈辱を成長のバネにしたのだろうが、屈辱からは100歩譲って生産性は生まれるとしても、創造性を培うことは難しいだろう。センスや心の状態のフラットさ加減が求められるだろうから。話を戻すと社員旅行。自分が好きだというのは、まあようやく、前述ヒエラルキーの低層を抜け出した、ということと、わりと雰囲気的なものをきちんと無視できる振る舞いとハラ坐りができるようになったから。

メインな目的地は城。そのあたりもなんと古風な感じがする。しかも、2日で3城を巡るという力の入れよう。そのひとつは築城ウン百周年という日本を代表する城郭。そして今ひとつが、そこで取り上げられると10年くらい喰えるといわれるほど観光産業に影響ある国営放送の人気ドラマの主人公の居城。年末で放映が終わり、観光客もほぼ皆無だった。カレンダー的にも冬の終わり、加えてわりと寒い地域なので余計冬っぽい。ドラマバブルで増設された観光バス用の広大な駐車場にぽつんと駐車。そこに至るまでの車中、酒飲み連中の宴の騒動で耳が慣れていたからだろうか、やたら靜か。天守閣はないもの城は切り立った断崖の上にあり、遙か櫓などを見上げると、さらに深く空が広がっている。その青の深さが寒々しい。そのうちどこからともなく、プロペラ音が聞こえてきた。傍らにいた暇そうな駐車場整理のオジサンが教えてくれた、なぜかこのあたりオスプレイが飛んでいるらしい。

温泉はこれまた日本代表する温泉地、とまではいかないにしろ、そこそこ歴史も情緒ある温泉場だった。そこそこ情緒の個人的な基準としては、そこで暮らしているひと達が入浴する公衆温泉施設がある、ということなのだが、そこにはあった(がしかし宿泊旅館の入泉設備が余りに味わい深かったため外湯に入る機会はなかった)。檜チックなバスタブ+2面ガラス張り...しかも屋上にあり旅愁ぶかい温泉街の街並を一望できる展望風呂。そして如何なる文筆家のメタファリックな書き回しすら押しつけがましく感じてしまうだろう歴史と趣を奥ゆかしい静寂さと湯けむり感で漂わせている隠し湯的な(館内が広すぎて辿り着くまで迷ってしまい、そんんあ意味でも隠し湯的)露天風呂。そして料理も豪奢、かつやりすぎない和風ノーブリックでかつ創造性に富んだものだった(とはいえ宴席なので具体的には良く覚えていない)。

そんな社員旅行。参加者多数のため、バスはほぼ満員。が2席がくっつき各窓に沿って2列の並びな。が、一応バスの責任者的な役を仰せつかった手前、2席を占有することができた。しかも、前の方でドリンクやら菓子類の格納スペースに近く、ダレの視線を気にすることもなく食い放題飲み放題というパラダイスなロケーション。ちなみにいうとお役目といっても、ビールの配布や車内アトラクションの仕切り、といったものはやりたい連中か断れない輩が実働隊になるので、自分はそれを割り当てるだけ。なんと楽しい旅行だった。

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