矢崎在美「ぶたぶた洋菓子店」

 ぶたぶたシリーズ第17弾。今回の舞台は、洋菓子店「コション」である。

 コションというのは、フランス語で「豚」という意味らしい。まんまやな(笑)。

 「ぶたぶたと秘密のアップルパイ」のアップルパイや「ぶたぶたカフェ」のホットケーキなど、このシリーズにはこれまでにもたくさんのスイーツが登場した。がしかし、意外にも洋菓子屋さんのパティシエというのは今回が初めてである。

 あとがきによれば矢崎さんはスイーツを食べるのは大好きだが、作るのは苦手とのこと、で、今回は札幌にあった洋菓子店「エ・ピュ・ドルチェ」の協力を得て、札幌の洋菓子店を何軒か取材されたそうである。その成果あって、今回も美味しそうなシーンがたっぷりと描かれていた。

 ちなみにこの「エ・ピュ・ドルチェ」は、「ぶたぶたのアップルパイ」を商品化されたりもしている。その当時は、全国のあちこちの百貨店(北海道物産展とか)でけっこう売られていたらしい。

 しかしながらこのお店、残念ながら2014年に閉店されたようである。う〜ん残念、一度食べてみたかったなぁ(涙)。

 それはともかく本作である。5編から成る連作短編集だが、第1話の続きが最終話で語られたりしているので、長編作品ともとれる構成になっている。

 登場するのは、スイーツコンテストに挑戦する高校生三人組(全員男子)、コションでバイトを始めた女性、マリッジブルーに悩む相手の気持ちに気付けない男性、会社を辞めて故郷に帰ってきた女性など。ちょっと重い話もあったりするが、今回はお菓子がメインだからか、あまり深刻さは感じられなかった。というかお菓子ばかりに目が行って、ストーリーがあんまり頭に入らなかったような気が(笑)。

 登場するスイーツは、ケーキをはじめとしてマドレーヌ、マカロン(ぶたの顔になっている(笑))、ラスク等々。ぶたぶたはこれらを森の中の「アトリエ」で作って、お店に運んで(この運ぶ役目が、前述のバイトの女性)売っているらしい。ちなみにお店の店長さんは、ぶたぶたの奥さんである。

 奥さんの他にも、山崎家の二人の娘も登場する。上のお姉ちゃんが中学生、下の子が小学生になっているようだ。相変わらず、下の子は不思議ちゃんである(笑)。

 話は逸れるが、マドレーヌ。僕はこのお菓子と「カップケーキ」との違いがずっと判らなかった。というか、カップケーキのことをフランスではマドレーヌって言うんじゃないか、くらいに思っていたのである。

 だから最近お菓子屋さんで貝殻の形をしたマドレーヌを見かけるようになって、「え、これがマドレーヌ?」と違和感を感じていたものである。で、今回調べてみたらもともとはこの貝殻型のものが元祖で、丸い紙やアルミの皿に乗ったものは日本だけだということが判明(なんでも日本に伝わった時に、パン・ド・ジェーヌという他のお菓子と混同されてしまったんだとか)。そ、そうだったのか…(汗)。

 矢崎さんのブログ「電脳海牛ブログ」によれば、今回のマドレーヌ(牛乳と合うらしい)のモデルとして思い浮かべられていたのは、神田精養軒というお店のマドレーヌということ。このお店も2009年に一度営業を停止されているが、2016年になって営業を再開されたらしい。

 写真を見る限り、貝殻型ではなく僕のよく知っているカップケーキ型のようである。ここのマドレーヌを食べたことがあるのかどうかは記憶にないが(たぶんないのだろう)、なんだか懐かしい気持ちにさせられた。

 う〜ん…予想通りというか何というか、やっぱりお菓子の話ばっかりになってしまったぞ。甘いものがそれほど好きというわけでもないのに(特に最近は歳のせいか、生クリームがキツい)。まぁそれだけ本作が、「甘いもの愛」に溢れているのである、と強引にまとめておこう(笑)。

 次に読む予定の「ぶたぶたのお医者さん」は獣医さんのお話なので、たぶん今回のようなことにはならないだろう。しかしぶたのぬいぐりみが獣医さんって…(笑)。