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建物からみる時代 昭和初期と帝冠様式

 都道府県庁や市町村庁など、役所の建物は建てられた当時の様子をときによく映し出してくれる。郷里の香川県庁は東館(旧本館)が戦後の代表的建築家・丹下健三の設計によって1958(昭和33)年に完成している。丹下健三にとって初期の代表作でもあるこの庁舎は、現在でもこれを見にやって来る人たちも少なくない。そのなかには外国人も含まれる。

 戦前の庁舎は、空襲などを受けて被災したものも少なくないけれど、現存しているものもある。大正末期から昭和初期にかけて、鉄筋コンクリート造の、当時としては最新の建築技術によって建てられたものがそれだ。これは関東大震災を受けて、倒壊や火災に強い建物の必要性が強く打ち出されたという背景がある。

 そしてこの頃に代表されるのが、和洋折衷のいわゆる帝冠様式と呼ばれる建築スタイルである。構造は洋風建築を軸にしながら、和風建築の特徴も取り入れているもので、現存するものも少なくない。

 代表的なのが、九段会館(旧・軍人会館)、東京国立博物館本館(旧・東京帝室博物館)である。鉄筋コンクリートに和風の屋根をつけていて、重厚感がある。もっとも、昭和初期の日本のイメージと合わさって、必要以上に重々しさを感じるところもあるけれども、この当時、建築や設計に政府からの統制が加えられたわけではない。このあたりが、たとえばドイツ建築との違いである。昭和初期、東洋の大国という強い自負が、建築家たちにも影響を与えたのだと思われる。

 県庁舎・市庁舎では、神奈川県庁のほか、愛知県庁静岡県庁、名古屋市役所などがある。基本的に、中央部に塔や城郭のような屋根が載っており、両翼を広げるようなかたちになっている。愛知県庁舎に至っては、名古屋城の屋根を移築したみたいで存在感がある。

 これらは、昭和初期、主に1930年代前後の建物である。一方、大阪府庁舎はそれよりやや前の大正末期に建てられたもので、鉄筋コンクリート造なのは同じだけれども、帝冠様式は採られていない。建築中、関東大震災が起こり、そのために設計に変更が加えられた経緯もある。それまでのレンガ造のモダン建築から、鉄筋コンクリート造に移るまさに転換期であった。

 一方、愛媛県庁舎は白を基調とした美しさがあるけれども、戦前は緑に塗られていたという。これも昭和初期に建てられており、先に紹介した帝冠様式を取り入れている。ただ、それほどの重々しさを感じないのは、中央部をドーム型にしているせいもあるのだろう。確かにこういう雰囲気ならば、結婚式を挙げるのも悪くない。

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 建築様式によって建てられた時代がはっきりと分かるのは、この昭和初期までとも言われている。戦後建築は、特定の様式にこだわらず、多様化していったからだ。もっとも、やはり建物にも流行はあるようで、バブル期、90年代、00年代に建てられたものには何となく「それっぽさ」がある。

 観光地を歩くにしても、建物に少し注意を払ってみると、意外な発見があるかもしれない。

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愛媛県庁本館で結婚式の試み